地方共同法人日本下水道事業団Japan Sewage Works Agency

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技術開発

JS技術開発情報メールNo.106

 

日本下水道事業団(JS)

◆◇◆━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

       2010・9・7

    JS技術開発情報メール No.106

━━━━━━━━━━━━━━━━━◆◇◆JS技術開発部

 

(目次)

◆トピックス

<ドイツ人から見た「日本の下水道」>

<HPをリニューアルしました>

◇部ログ

<「化石賞」をご存知ですか?>

◆要語集12

<UPI法>

<EPS>

◇下水道よもやま話

<スーパー活性汚泥誕生に一歩近づく?>

◆技術のポイント(部長コーナー)

<小規模処理場(1)>

 

 

 

━━☆★ トピックス ★☆━━

 

☆ ドイツ人から見た「日本の下水道」 ★

 

       アーヘン工科大学環境工学研究所

        フィリップ・スタウファー

        

日本下水道事業団とアーヘン工科大学環境工学研究所の間の技術者交流プログラムにより、日本に滞在した6ヶ月間、私は、日本の文化、生活そして下水道技術について、非常に多くの感銘を受けました。技術開発部の同僚との議論や共同研究を通じて、私は、「新たなやり方」と「物事の新たな見方」を経験でき、非常に感謝しています。

 

ドイツと比べ、日本の下水道は、地方と高度に都市化した地域の間の違いと同様に、気象条件の違いに、より極端に対応しています。穏やかな気候の国から来た技術者にとり、日本の非常に精巧な洪水制御システムや並外れた容量の雨水ポンプ場は、非常に印象的でした。

 

環境の見地からは、日本はただ海に囲まれているだけではなく、その国土に無数の水路が混交し、日本の料理は、多くの魚介類を使用していました。養魚場や水路、飲料水、魚介類のような天然資源を保護すべきであり、膜分離活性汚泥法の採用や下水処理場放流水の消毒の促進は、国民の健康の保護に応えた例でした。

 

ドイツと日本との違いで驚いたものに、水道使用量もあります。日水道使用量を130L/人/日として下水道施設を計画するのに慣れているドイツの衛生工学者にとり、日本の水道使用量の多さは驚きでした。

 

日本の技術が国内だけでしか適用できない技術(Galapagos Technology)と不安を感じている日本人がいると思いますが、下水道施設やその他の話題についての議論を通して、そのような不安は、間違っていることがわかりました。

 

下水処理水の再利用、温室効果ガスの削減、高度処理の分野では、21世紀の世界の重要な課題への対策になる段階の技術開発が行われています。友好的で、丁寧な日本のやり方は、これらの開発技術を海外へ広めることを確かなものにすると思います。

 

日本とドイツは同じような社会的背景があり、人口高齢化や気候変動、下水道施設の再構築など、共通の下地があります。このような問題に対して、今後も技術者が協力して対処する中で、下水道技術の分野における両国の主要な地位が確実になるかもしれません。

 

わずか6ヶ月と短い間でしたが、皆さんと一緒に仕事ができて、大変うれしく思っています。本当に、ありがとうございました。

 

 

 

☆ HPをリニューアルしました ★

 

日本下水道事業団HPリニューアルにともない技術開発部のページもリニューアルしました。"わかり易く"を目指した構成にしました。

○日本下水道事業団HPアドレス

http://www.jswa.go.jp/

 

また英語のHPを新規で公開しました。

○日本下水道事業団英語HPアドレス

http://www.jswa.go.jp/english/index.html

 

多くの方にアクセスいただいて活用いただければ幸いです。

次号のメルマガで詳しく紹介する予定です。

 

 

 

 

━━☆★ 部ログ ★☆━━

 

<「化石賞」をご存知ですか?>

 

島田:今年の夏は異常な記録的暑さが続いていますが、これも地球温暖化に起因しているのではとも言われています。地球温暖化といえば、わが国がたびたび「化石賞」に選ばれていることは皆さんご存知でしょうか?

 

編集委員:「化石賞」って聞いたことないですね。「新しい恐竜の化石等でも発見して、名誉ある賞か何かもらったんですか」

島田:残念ながら名誉ある賞ではなく、国際地球環境NGOから、温暖化対策など地球環境問題に最も消極的で、やる気のないとみられる国に贈られる不名誉な賞です。

 

編集委員:へエ〜 驚きました。日本は京都議定書とりまとめのホスト国ですし、「地球環境問題に積極的に取り組んでいる国」と思っていましたが、世界の環境専門家からは「日本はやる気のない国」と見られているのですか。

 

島田:具体的事例をいくつか紹介しましよう。まず最初ですが、日本では「風力発電やバイオマス発電などの自然エネルギーを用いて発電した電力を使うと高い税金が課せられる」ということをご存知でしょうか?

 

石炭などの化石燃料で発電した電力を工場でたくさん利用しても、必要経費とみなされ税金はかかりませんが、グリーン電力といわれる自然環境にやさしい電力を購入して使う場合は「寄付金」相当の高い税金が課せられるのです。

 

編集委員:まさしく「自然エネルギーなんか使うな」と国が呼びかけているのと同じですね。どうしてそうなるのですか?

 

編集委員:日本では自然エネルギー利用に対する国の制度が未熟で、「グリーン電力を使う」ことは国の施策とは関係なくやりたい人が勝手にやっているという考えではないでしょうか。

 

島田:次の例ですが、ドイツなどでは貴重な再生可能エネルギー資源である下水バイオガスの積極的な有効利用を図るため、都市ガスへの供給あるいはガス発電による電力会社への売電を推進すべく多くの優遇措置が講じられています。

 

しかし、日本では「下水バイオガス(消化ガス)を都市ガスへ供給したり、ガス発電により回収した電力を電力会社に売却する場合は、売却益を国に納入するか、目的外使用に該当するため国庫補助金を返還しろ」といわれるそうです。

 

編集委員:「下水バイオガスの有効利用などしたら罰金を科す」と言わんばかりの考え方ですね。

 

編集委員:日本で温室効果ガス削減が進まないわけが理解できました。

 

島田:三つ目の例を紹介します。循環型社会を推進するため天然資源の消費を極力抑え、できる限り再生資源(リサイクル品:グリーン製品)の使用を推進しようと世界各国が積極的に取り組んでいます。

 

わが国にも『グリーン製品調達制度』というのがありますが、この制度等において下水汚泥焼却灰などの再生資源を利用するには「土壌環境基準値を満足していること」といった大変厳しい制限を設けようとしています。本来、土壌環境基準は安全性の基準でもなんでもなく、天然資源で土壌環境基準を超えているものが多く市場に出回っています。天然資源を利用する場合は何の規制もなく、再生資源を有効利用使用とする場合のみ厳しい基準を適用しようとしているわけです。

 

編集委員:循環型社会を本当に推進しようとするなら、逆に天然資源利用に対し厳しい規制を設けて、再生資源利用を促すというのが本来のやり方ですよね。

 

編集委員:驚きました。日本がこんなに地球環境問題に消極的だとは。実は私もスーパーで買い物するとき環境に優しい製品(エコ製品)より、値段の安いものをつい選んで買っていました。

 

編集委員:ヨーロッパの多くの国では環境に優しい自転車の普及のため、自転車専用道の整備など積極的に進めていますが、日本では自転車を邪魔者扱いこそすれ、あまり積極的に普及させようという施策はないですね。

 

島田:「経済と環境」はトレードオフの関係にありますが、ヨーロッパでは小学生の頃から「あらゆる環境問題」について熱心に教育しているため、7割以上の人が「経済より環境を優先」と考えているそうです。日本では未だ「環境より経済優先」という意見が強いのでしょうね。

 

編集委員:日本でも国民一人一人の「地球環境問題」に対する意識改革を進め、早急に制度を改めないと、次回も「化石賞」受賞間違いなしですね。

 

(講師、編集:島田正夫)

 

 

 

 

━━☆★ 要語集 12 ★☆━━

 

<UCT法>

<EPS>

 

※PDFで全文と図が添付されています。

 

UCT(University of Cape Town)法

【解説】生物学的リン除去法の1つ。嫌気−無酸素−好気の順に反応タンクを配置し、好気タンクからの硝化液を無酸素槽へ、無酸素タンクからの脱窒液を嫌気槽へ循環する2段循環を行います(図参照)。最終沈殿池からの汚泥は無酸素タンクに返送します。

 

NOx-Nを含む硝化液や返送汚泥を嫌気タンクに戻さないことからリン除去性能が安定します。一方、嫌気タンクへの活性汚泥供給を脱窒液循環のみに頼るため、嫌気タンク内のMLSS濃度が低下しやすくなります。

 我が国の下水道における生物学的リン除去法では、A2O法やAO法が一般的ですが、近年、最終沈殿池を有さない膜分離活性汚泥法において、膜型UCT法の適用性が検討されています。

 

 

EPS(Extracellular Polymeric Substances:細胞外代謝産物)、(Extracellular Polysaccharide:細胞外多糖)

 

【解説】細胞外代謝産物は、微生物の代謝産物で、微生物細胞表面あるいは微生物集塊内部に存在する高分子量有機物の総称です。膜分離活性汚泥法における目詰まり原因物質の1つとされています。

 

一方、細胞外多糖は、微生物が自己防御や物質運搬のために、細胞外に分泌する物質です。バイオフィルム(配管のヌメリを想像して下さい)が形成される際に、微生物が細胞外多糖を分泌することにより、集合体ができるとともに、バイオフィルムが成長します。糖類を主成分とした細胞外多糖は、多くの微生物に存在すると言われています。

 

前者はMBRで、後者は生物・環境学で使われている用語です。

 

(技術開発課 三宅十四日)

 

 

 

 

 

━━☆★ 下水道よもやま話 ★☆━━

 

<スーパー活性汚泥誕生に一歩近づく?>

 

少し前になりますが、米国の研究所で「人工細菌」の合成に初めて成功したとの新聞記事を目にしました。

 

ある細菌のゲノム(遺伝情報)を真似て人工的にDNAを化学合成し、器となるゲノムを除いた別の細菌にこれを移植したところ、もとの細菌と同じタンパク質を作り、増殖を繰り返すことが確認されたというものです。

 

医薬品やワクチン、バイオ燃料の効率的な生産や水質浄化等に利用できる新細菌の開発が目的と言うことです。

 

今から十年程前の話になりますが、遺伝子工学的手法を用いた活性汚泥中の微生物の検出方法に関する調査研究を担当していました私は、ある日、当時の技術開発部長に呼ばれて、遺伝子工学の技術を用いて何でも処理できる「スーパー活性汚泥」を作れないのかと尋ねられたことがあります。

 

その時、開放系(絶えず流入下水から他の微生物が流入し、処理水として微生物が流出する)の下水処理システムにおいては、有用な遺伝子を組み込んだ微生物をいかに安定して維持するかや、遺伝子を組み込んだ微生物が環境中に出た場合の安全性など、乗り越えるべき課題は沢山あり、実現は困難でしょうとお答えした記憶があります。

 

しかし、様々な微生物が共存することにより、有機物のみならず、窒素やリン、微量化学物質等の処理をこなしている活性汚泥自体、すでに「スーパー」な存在であると言えます。

 

そして、人工細菌の合成成功によって、さらにスーパーな活性汚泥の誕生に一歩近づいたのかも知れません。

 

(総括主任研究員 橋本敏一)

 

 

 

 

 

 

━━☆★技術のポイント(部長コーナー) ★☆━━

 

<小規模処理場(1):小規模処理場向け水処理技術の開発の背景>

 

 

JS技術開発情報メールをご愛読いただき、ありがとうございます。今回から、小規模処理場シリーズを始めますが、その第1回として、まず、「小規模処理場向けの水処理方式は、どのような背景で開発・実用化されてきたのか?」を考えてみたいと思います。

 

「下水道施設計画・設計指針と解説―2009年版―」では、小規模下水道は、計画人口が概ね10,000人以下の下水道をいうと定義され、小規模処理場の対象汚水量は、5,000m3/日以下と考えられます。

 

小規模処理場は、対象とする地域の形態、産業構成などによって流入下水の水量および水質が大きく異なるとともに、これらの時間、日および季節による変動が大きくなるなどの特徴があります。さらに、一人当たりの建設費や維持管理費が割高となる傾向があり、故障時や維持補修に対してメーカーによる迅速なサービスを得がたい場合が多いと考えられます。

 

日本下水道事業団技術開発部では、主として1980年代に、回転生物接触法、オキシデーションディッチ法、回分式活性汚泥法、接触酸化法、好気性ろ床法等、様々な小規模処理場向けの水処理技術の調査、開発、評価を実施しました。

 

これらの成果の一部として、【回転生物接触法:第1次(昭和53年11月)、第2次(昭和57年12月)】、【オキシデーションディッチ法:第1次(昭和58年12月)、第2次(昭和60年9月)】、【回分式活性汚泥法:第1次(昭和61年11月)、第2次(昭和63年5月)】について技術評価が行われています。

 

(社)日本下水道協会の「下水道統計」から、最新の情報がある2008年度と25年前の1983年度のデータを比較すると、計画晴天時日最大処理水量5,000m3/日未満の処理場数は、それぞれ、1,162処理場と75処理場で、小規模処理場の数が大幅に増加していることがわかります。採用の多い水処理方式を上位5番まで並べる(( )内数字は処理場数)と、以下のようになり、日本下水道事業団が開発、評価した成果が反映されています。

 

【2008年度末】

オキシデーションディッチ法(851)、回分式活性汚泥法(61)、標準活性汚泥法(55)、嫌気好気ろ床法(42)、長時間エアレーション法(36)

 

【1983年度末】

標準活性汚泥法(42)、長時間エアレーション法(12)、回転生物接触法(7)、オキシデーションディッチ法(6)、高速エアレーション沈殿池(3)

 

技術評価では、除去特性について、当時、標準活性汚泥法の処理場で常識であった「処理水のBOD5 20mg/L以下、SS 70mg/L以下」を前提としていますし、その他の項目(汚泥発生量、必要酸素量、処理水の透視度、汚泥の濃縮性と脱水性)も含め、「標準活性汚泥法」と比較して評価しています。

 

1970年代には、「処理水のBOD5」、「バルキング対策」、「放線菌対策」が標準活性汚泥法の運転管理のポイントでしたが、今では、「N−BOD対策(完全硝化)」、「硝化・脱窒運転」、「嫌気・好気・無酸素の設定」などが常識になっています。このため、一般的な放流水質に求められる水準の変遷など、技術評価をしていた時代と現在の違いを理解しておくことが、小規模処理場の運営方法を考える上で重要です。

 

次回以降、小規模処理場用に実用化され実績のある水処理方式について、汚泥処理も含め、設計上の留意事項、運転管理上の留意事項等のポイントを紹介していきたいと思います。

 

(技術開発部長 中沢均)

 

 

     

     

 

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