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技術開発

JS技術開発情報メールNo.111

 

日本下水道事業団(JS)

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       2011・2・4

    JS技術開発情報メール No.111

━━━━━━━━━━━━━━━━━◆◇◆JS技術開発部

 

(目次)

◆トピックス

<海外出張報告その1>

◇幹部ログ

<ひび割れ>

◆要語集 No.16

<バイオフィルム(biofilm)>

◇下水道よもやま話

<虎になるんだ!>

◆技術のポイント(部長コーナー)

<高度処理技術(2):オゾン処理の事例>

 

 

 

━━☆★ トピックス ★☆━━

 

☆ 海外出張報告(その1) ★

 

〜膜分離活性汚泥法(MBR)施設の見学〜

 

※添付ファイルに写真が掲載されています。

 

平成23年1月9日〜12日にアメリカのフロリダ州マイアミ市で開催されたWEF(米国水環境連盟)とIWA(国際水学会)が主催したNutrient Recovery and Management 2011に参加して、口頭発表を行ってきました。また、国際学会に参加する前に、ジョージア州のアトランタ市にあるMBRの下水処理場の見学に行ってきました。今月号にはMBR施設の見学、次号には国際学会の内容について報告します。

 

ジョージア州のアトランタ市にあるJohn CreekとLinwoodという名前の2ヶ所のMBR施設をGE社のJoseph氏の案内で見学しました。両施設とも、アメリカ国内の多くのMBR施設で設置されているGE社の中空糸膜(公称孔径0.04μm)が設置してありました(日本での導入実績は1ヶ所、2011年1月現在)。

 

John Creekは、アトランタ市の中心街から車で北に30分ほどハイウェイで移動したNorth Fultonという街にあります。この地域はもともと平地の森林地帯でした。現在でも、多くの自然が残っていますが、ベットタウンとなっており、多くの人が生活しています。従来、住宅地に近い場所にあった下水処理場で下水を処理していましたが、老朽化や流入下水量の増加にともない、住宅地から少し離れた場所に日平均処理可能水量が約56,000m3/日のMBR施設を建設し、2007年から稼動しています。

 

現場では維持管理をしているVeolia社の方から説明をうけました。MBRが導入された理由は、敷地面積が狭くなることや良好な処理水質が得られるといった一般的なメリット以外に、周辺地域住民の“環境教育の場”として下水処理場を位置づける目的もあったようです。MBRの処理水(膜ろ過水)は、修景用水やトイレの洗浄水などとして利用できるため、下水の処理水が再利用できることを小学生に教えたり、上水用の水を取水している河川に、安全な下水処理水を放流していることなどを住民に教えたりしているそうです。また、周辺自治体向けにMBRの研修も行っているとのことでした。

 

この処理場では、住宅地域に近いこともあり、臭気と騒音にはとても気を配っていました。処理場からの排気は、すべて活性炭処理を行っていました。また、騒音対策として、防音壁を用いて処理場を建設しており、施工前には、騒音のレベルをシミュレーションにて確認をしたようです。確かに、処理場を訪れたときには、下水の臭いはまったくしませんでしたし、送風機などが設置してある部屋に近づいても、ほとんど音が聞こえませんでした。

 

Linwoodは、アトランタ市の中心街からハイウェイで1時間30分ほど北に移動したところにあり、既存の施設をすべて取り壊してMBRに改築し、2008年から下水処理を行っています。日平均処理可能水量は、約20,000m3/日です。処理場のすぐ横に湖があり、窒素・リンの除去は必須とのことでした。ここでは、所長さんから説明をうけ、しきりにMBRは管理がとても簡単と言っていました。処理場内は、改築前の半分程度の3〜4人で維持管理を行っていました。MBRの運転管理には、GE社が開発したソフトを使っており、なにかトラブルがあったときには、GE社の人が駆けつけて対応してくれるので、心配事も減ったそうです。

 

両処理場を通じて驚いたことは、処理水を放流する際に、DO濃度6mg/L以上にしなければいけないということでした。河川の嫌気化を防ぐことが目的で、アメリカでは、ほとんどの処理場で行われているようです。また、MBR施設は処理コストが高いことが知られていますが、お国柄なのか、コストよりも良好な処理水質を得られることや簡易な維持管理ができることの方が重要ということにも驚きました。

 (技術開発課 辻 幸志)

 

 

 

 

━━☆★ 幹部ログ ★☆━━

 

<ひび割れ>

 

編集委員:今回の部ログは、佐野総括を講師に迎え、コンクリート構造物のびび割れについてお話をしてもらおうと思います。それでは、佐野総括よろしくお願いいたします。

 

佐野:コンクリート構造物のひび割れ防止は、耐久性、水密性、構造耐力の確保、使用性、美観の維持のために必要です。

ひび割れは、材料、施工、構造が起因しています。

 

下水道施設は、重要構造物の多くが水槽で、水路や開口部などがあり構造が複雑なのが特徴です。ひび割れの主な原因は、温度ひび割れによる膨張及び収縮変形です。

 

セメントは、打設した直後から、水との化学反応で発熱・膨張し、その後、温度が降下してくると収縮します。コンクリートは、圧縮に強いのですが、引張りには弱く、温度の降下量が大きいとひび割れが生じます。

 

ひび割れを起こさないための対策として、ひび割れ制御を考慮した工程、打設計画を組み、温度ひび割れ解析等を行います。一般的に丁寧に打設したものは、ひび割れが少なくなります。

 

編集委員:お化粧と一緒ね、下地から丁寧に行うとやはり違うもの。

 

佐野:また、温度の降下量を少なくするため、冷たい水を使ったり、セメント量を規定以内で少なくしたり工夫もします。

 

編集委員:壁とかでコンクリートを打ちつぐとき、くっつきやすくするには、どのようなことをしているの?

 

佐野:コンクリート打設後、表面に不純物が出てくるので、それをまず除去します。そのあと、くっつきやすくするために表面をざらざらにします。

 

編集委員:お化粧ものりをよくするために、肌をざらざらにするの?

 

編集委員:そんなことしません (⌒_⌒; タラタラ

 

編集委員:痛んできたコンクリートを長持ちさせるにはどうすればいいの?

 

佐野:痛んだコンクリートは、痛んだ部分を除去し、下地処理をしてから、モルタルを塗り補修します。いっぺんに厚く塗るとひび割れを起こします。

 

編集委員:そこは化粧と一緒ね、化粧直しするときは、直したい部分の化粧を一度落として下地処理をしっかりしてから塗るとのりもいいもの。また、いっぺんに厚く塗らず、薄く重ねるように塗っているもの。

 

編集委員:化粧でごまかすのもいいけど、しわだらけだったら、意味ないじゃない。

 

編集委員:しわにしないために皮膚を引っ張って張りを持たせる方法があるって聞いたぞ。

 

佐野:コンクリートは、逆です。ひび割れを起こさないように引っ張り力を打ち消すため、PC鋼材を使用してあらかじめ圧縮力を導入したり、膨張材を混入したりもします。

 

編集委員:田中さんは若いから、今のうちからお肌の手入れをしておくといいね。

 

田中:しわを作らないために、これから、ぜったい笑らいません!!

 

(編集:橋本康弘)

 

 

 

 

━━☆★ 要語集 No.16★☆━━

 

 <バイオフィルム(biofilm)>

 

※PDFで全文が添付されています

 

バイオフィルムは、下水では古くから散水ろ床法や接触酸化法などの支持体の表面に形成される生物膜として馴染み深いものであるが、近年の生物学的な分析技術の発達により、その実態が明らかにされつつある。

 

バイオフィルムは、細胞外多糖(ESP)などからなる細胞間マトリックス(基質)に包まれた多数の細菌の集合体であり、環境中のほか、飲料水配管や動物の消化管、歯のプラークなど、様々な場所から見出されている。バイオフィルム中の細菌は、浮遊状態と形も異なり増殖速度も遅くなるが、原生動物などの捕食や毒物などの”環境ストレス”から防護されるのが最大のメリットと考えられている。

 

好気的なバイオフィルムの構造は、滑らかな平面ではなく、不規則な柱状構造が林立しており、その隙間を通して水と栄養が満遍なく運ばれている。バイオフィルムは容積の85%が基質であり、多種多様な微生物が基質を解した代謝物の循環系を形成している。しかし、バイオフィルムは決して静的な存在ではなく、細菌は環境変化に応じて浮遊と固着を繰り返している。

 

近年、活性汚泥法に加えて、自己造粒法や担体添加法、膜分離活性汚泥法など、バイオフィルムの功罪の影響を強く受ける処理方法が注目されている。最近の研究によれば、汚れ物質を直接摂取する細菌類は環境中では原生動物などの攻撃を避けるため、その多くが個体の小型化やバイオフィルムの形成を行なっており、増殖が制限されているという。処理の効率化を考える上では、捕食者の制御も重要な要素と考えられる。

 

参考)Rita R.Colwell, D.Jay Grimes編(遠藤圭子訳);培養できない微生物たち-自然環境中の微生物の姿(2004)学会出版センター,外

 

(技術開発部 川口幸男)

 

 

 

 

━━☆★ 下水道よもやま話 ★☆━━

 

<虎になるんだ!>

 

昨年、寅年のクリスマスの日に「伊達直人」と名乗る人物から、児童相談所へランドセルが送られたことを皮切り、いわゆるタイガーマスク運動が全国に広がっています。元プロレスファンであった故に、人一倍喜ばしく感じています。

 

原作の冒頭、伊達直人は、虎の檻の前で‘虎になるんだ!’と意思を固め、レスラー養成所「虎の穴」で鍛えぬき、虎の如く強いレスラーへと成長を果たします。そして、自らが育った児童施設の窮状から、自身の資金繰りがショートする程の寄付、支援を続けます。

 

ところで、下水道の世界で活躍しているメタン菌、アナモックス菌等々は、世のため人のためとの志を持ってメタン発酵、脱窒などの有用な働きをしているとは思えません。彼ら菌に適した環境等を作り出し、保持してこそ、活躍してくれます。また、酸に弱いセメントに‘強くなるんだ!’と叫んでも駄目で、人為的に工夫を加えることが必要です。

 

一方、限界があるものの人は、自らの意思で自分を変えることが可能です。下水道に携わっている多くの人は、いずれ必ずや仕事に精通した‘下水道マンになるんだ!’との思いを一度は持たれたのではないでしょうか。「下水道マン」が一人ずつ増える毎に、下水道を通じた社会貢献がより一層進むものと信じています。

 

「下水道の穴」と言えばマンホールかもしれませんが、どこの職場、どこの場所でも、自らの意思で、「下水道マン」成就に向けた鍛練ができます。私は、日々取組み、日々挫折していますが、今日こそは・・・。

 

(総括主任研究員 佐野勝実)

 

 

 

━━☆★技術のポイント(部長コーナー) ★☆━━

 

<高度処理技術(2):オゾン処理の事例>

 

都市内における水資源確保や地球環境保全の観点などから、積極的な下水処理水の再生水利用が求められていますが、我が国では、下水処理水量のうちの約1.4%だけが、環境用水(河川維持水、修景用水、親水用水)の他、融雪用水や水洗用水、工業用水など様々用途に再利用されているのが現状です。

 

下水処理水の再生水利用を検討する場合、用途により除去対象物質と目標処理水質が異なります。有機物と栄養塩類の除去を目的とした活性汚泥法による生物学的な高度処理には限界がありますので、オゾン処理のような化学的高度処理の必要性が高まっています。

 

オゾンを利用する水処理技術は、オゾンが有する強い酸化力により、消毒や脱色、有機物等の酸化分解等、多様な処理効果を同時に得ることができるため、難分解性CODの除去による閉鎖性水域のさらなる水質改善や下水処理水の再生水利用の促進、微量化学物質や病原性微生物による水系リスクの低減等、新たな課題に対する有用な処理技術の一つです。しかしながら、平成20年度末現在、全国56箇所の下水処理場でオゾン処理施設が稼動しているに過ぎません。

 

日本下水道事業団技術開発部では、これまで、下水処理水の脱色(平成元年度〜平成5年度)、下水処理水中の難分解性COD除去(平成5年度〜平成11年度)、消毒技術の評価(平成6年度〜平成8年度)、水系リスクの低減および再生水利用への適用(平成11年度〜)など、多様なオゾン処理技術の調査研究を実施してきました。

 

このうち、水系リスクの低減および再生水利用への適用に関しては、@全有機ハロゲン化合物(TOX)、A内分泌撹乱物質(エストロゲンなど)、Bノロウイルスなどの除去を目的とした調査研究を実施し、「オゾン処理法及びオゾンを用いた促進酸化処理法」、「マイクロバブルを用いた経済的かつ低環境負荷型のオゾン消毒技術(オゾンマイクロバブル技術)」等の共同研究等を実施しました。

 

オゾン処理技術の多様な処理効果や、前処理設備や後処理設備を含む処理プロセス全体の設計や維持管理の考え方、オゾンを用いた促進酸化処理法の下水処理への適用性などについては体系的な評価がありませんでした。このため、調査研究結果の成果、オゾン処理施設に関する実態調査の結果、並びに、オゾン処理技術に関する既往の知見を体系的に整理し、オゾン処理技術の処理特性や設計および維持管理の考え方などを「オゾン処理技術の技術評価に関する報告書」(平成21年4月)として発刊しました。

 

オゾン処理技術は、処理コストが比較的高いことなどから、広く普及していませんが、オゾン処理技術のさらなる省エネルギー化、低コスト化を目指した技術開発が進展し、下水処理水再生水利用の事例が増加するとともに水環境リスクの低減に果たす下水道の役割がさらに大きくなるのに伴って、今後、脚光を浴びるものと期待しています。

 

(技術開発部長 中沢)

 

 

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