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技術開発

JS技術開発情報メールNo.112

 

日本下水道事業団(JS)

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       2011・3・9

    JS技術開発情報メール No.112

━━━━━━━━━━━━━━━━━◆◇◆JS技術開発部

 

(目次)

◆トピックス

<海外出張報告その2>

◇幹部ログ

<培養できない微生物>

◆要語集 No.17

<ちんでんち:沈殿池>

◇下水道よもやま話

<所変われば…>

◆技術のポイント(部長コーナー)

<高度処理技術(3):既存施設を有効利用した高度処理技術の開発>

 

 

 

━━☆★ トピックス ★☆━━

 

☆ 海外出張報告(その2) ★

 

〜国際学会への参加と口頭発表〜

 

※添付ファイルに写真が掲載されています。

 

今月号では、フロリダ州マイアミ市で開催されたNutrient Recovery and Management 2011に参加し、口頭発表を行ってきた内容を報告します。

 

参加した学会の発表内容の多くは、下水または産業廃水などからの窒素またはリンの除去・回収やその維持管理に関係するものでした。

 

参加者の半分以上はアメリカ人で、とても親しみを感じる雰囲気の学会でした。学会の形式も交友を深めることを重視しており、発表するセッションが同じ発表者と座長は、発表当日の朝食を一緒に食べながら、お互いの発表内容や出身などを話す機会が設けられていました。さらに、発表会場では、発表者全員が壇上に座り、すべての発表が終わった後、会場の人たちと議論する時間がありました。

 

また、アメリカらしいなと思いましたが、会場の受付の横に設置されたモニタに、この学会のTwitterのパソコン画面がリアルタイムで映し出されており、昼食の時間や休憩時間にかなりの数の書き込みがされていました。

 

学会最終日にFocused Discussion: Phosphorus Removal to Very Low Levelsというセッションで口頭発表を行いました。全員の発表が終わった後、1時間にわたり議論する時間が設けてありました。

 

座長が会場をうろうろしながら、発表者と会場の人たち、発表者同士、さらには会場の人同士で熱い議論がくりひろげられました。セッション終了後にも発表者同士で話し合うこともでき、非常に有意義な時間をすごすことができました。

 

学会期間中に、マイアミ市の標準活性汚泥法の下水処理場を見学するツアーにも参加しました。

 

アメリカでは、公共施設のセキュリティーはかなり厳しいようで、処理場の入場口でなかなかバスを入れてもらえませんでした。さらには、見学する際もずっと警備員に見張られていましたし、処理場の説明も管理棟内の模型の前で所長さんが行うだけで、施設の写真撮影はNG、そして、施設はバスの中からしか見ることしかできませんでした。

 

 処理施設の建物の敷地面積は全体の10分の1にも満たない程度で、半分程度の敷地を汚泥の乾燥用地として利用していました(残りは空き地や池など)。

 

 また、再生水利用を目的としたMBRの実験プラントが場内にあり見学しました(ここは写真撮影OKでバスからも降ろしてくれました)。

 

MBRには、旭化成ケミカルズ株式会社の膜が設置してあり、偶然、1週間だけ滞在していた旭化成ケミカルズ株式会社の日本の技術者と会うことができ、より詳しい内容を聞くこともできました。

 

この実験プラントでは、脱窒反応のために有機物を添加していました。一般的には有機物としてメタノールを使用することが多いですが、ここではメタノールよりも値段が高いにもかかわらず、環境負荷が低いからと農業廃水を使用しており驚きました。

 

          (技術開発課 辻 幸志)

 

 

 

 

━━☆★ 幹部ログ ★☆━━

 

<培養できない微生物>

 

編集委員:今回の部ログは「培養できない微生物」を題材として、川口幸男主任研究員講師をお招きしました。よろしくお願いします。

 

川口:活性汚泥には多くの種類の微生物が存在していますが、人為的に培養できるのは最大でも50%程度と言われています。というのも、近年の分析技術の発展で、遺伝子を増殖して生物を測定できるPCR法や、自然のままで細菌等を観察できる透過電子顕微鏡等が開発されてわかってきました。

 

また、細菌は増殖中や休眠状態で、大きさが数倍〜10倍、体積では3乗オーダーで変化するということもわかってきています。

 

祐布子リン:えっ3乗! 私最近お菓子の食べすぎで...でもJSを離れたら綺麗に痩せちゃいますよ。うふっ。

 

編集委員:細菌も祐布子リンもリバウンドするでしょう。

 

川口:細菌は大きくなりすぎたら分裂できるからね。

 

編集委員:人間も分裂できたらいいのに。僕がいっぱいってどうですか?

 

編集委員:一人でも多いのに...

 

編集委員:減数分裂しなくちゃ。

 

川口:微生物は体のサイズを小さくして休眠することもできますよ。コハクに封じ込められた蜂から検出された細菌が三千年の休眠から復活したっていうのは有名かな。

 

編集委員:もうSFの世界ですね。地殻変動で隆起した土壌から微生物が大量増殖して地球を征服したとか...

 

編集委員:環境が整えば、何かのチャンスに復活できるのですね。

 

川口:征服したら生存しにくいけど、微生物には寄生したり、共生したり、捕食したりと様々な関係がある。バイオフィルムの中の微生物は、基質や代謝物をやり取りすることで、助け合うサイクルができているみたいです。

 

編集委員:バイオフィルムというのはイメージつきますか? 我が家なんか、掃除が行き届かないので、浴室にピンクのバイオフィルムが出現しますよ。

 

一同:えええっ。

 

編集委員:ちなみにピンクになるのはセリチア菌です。健常人にはほぼ無害です。我が家は色々なものを培養して、研究に励んでいるんです。

(なんちゃって、御免なさい旦那様...)

 

             (編集:三宅十四日)

 

 

 

 

 

━━☆★ 要語集 No.17★☆━━

 

 <ちんでんち:沈殿池>

 

※PDFで全文が添付されています

 

【解説】水と固形物を分離するために水の流れを遅くし、固形物を沈殿させるための水槽である。

 

下水処理場には、一般的に以下の沈殿池がある。

 

初沈:「しょちん」と読み、最初沈殿池:さいしょちんでんち”の略語である。

 

反応タンクの前に設置し、流入下水中のこまかな固形物を沈殿させるための水槽である。下水処理場に入ってきた下水中の砂を最初に沈殿させるためにある水槽である“沈砂池:ちんさち”があるため、厳密にいうと最初ではない。東京都では、“一沈:いっちん”、正式には“第一沈殿池:だいいちちんでんち”と呼ぶ。

 

終沈:「しゅうちん」と読み、“最終沈殿池:さいしゅうちんでんち”の略語である。

 

反応タンクの後に設置し、反応タンクで微生物の入った泥(活性汚泥)により有機物を分解しきれいになった水(処理水)と活性汚泥とを最後の仕上げに分離させるための水槽である。

 

ただ、最終処理として処理水を塩素消毒するためにある“塩混:えんこん”、正式には、“塩素混和池:えんそこんわち”があるため、最終ではない。東京都では、“二沈:にちん”、正式には、“第二沈殿池:だいにちんでんち”と呼ぶ。

 

           (技術開発課 橋本康弘)

 

 

 

 

━━☆★ 下水道よもやま話 ★☆━━

 

<所変われば…>

 

最近、下水道技術の海外移転の話が盛んですが、御多分に漏れず私も昨年北京に行く機会がありました。中国は2008年の北京オリンピックを機に急ピッチで下水道が建設され、世界レベルの様々な最先端の処理技術が導入されています。

 

計画水質を見ると、流入水も処理水も日本と遜色がないかそれを上回る数値が並んでおり、実状を知らないと「日本と大して違わないのでは?」と、勝手に想像してしまいます。ところが、現地で話を聞き、資料を見せてもらうと大分様相が違うことが分かります。

 

 “汚水処理率”とは、水洗化普及率や接続率ではなく、汚水が河川に入る前に収集して処理場に送水する遮集管きょの整備率のことであり、実際の流入水の有機汚濁質は途中で分解が進むため、水質はとても希薄なものです。

 

また、雨が夏期に集中し、内陸で降雨量も少なく、水道使用量も日本の半分位ということです。冬は北海道以上に冷え込むといい、高度処理で生物学的窒素除去法を適用しようとすると、流入アンモニア濃度だけ日本の2倍程度あり、水温も有機物も大幅に足りない状況でした。

 

国土交通省の平成22年版「日本の水資源」に掲載された「OECD加盟国における1人1日平均生活用水使用量」(参照:http://www.mlit.go.jp/common/000120854.pdf)によりますと、日本の水使用量は掲載27ヶ国中8番目に多く、最も多いカナダの約半分、最も少ないスイスの約6倍使っている計算になります。

 

人間の糞尿排泄量にそれほど大きな差はありませんから、濃度は使用水量に反比例することになり、水事情によって流入下水の水質が大きく異なることになります。

 

一方、放流水質についても地域によって事情が異なってくるという話がありました。海苔加工排水は、海水に海苔を粉砕したときに生じる濁質が多く含まれており、地域の河川を赤茶色に染めて社会問題になっているため、下水処理場で処理できないかというものでした。

 

下水処理水は既に農業利用もされており、塩水流入による処理悪化と農業利用への悪影響が懸念されていました。地場産業保護・育成を考えれば、行政側で排水処理の手当てをすべきでしょうが、農業の保護・育成も考えなければなりません。一見、相反する課題で両立は難しく考えられましたが、実状を聞くと海苔養殖は11月から3月の時期であり、処理水の農業利用は3月から11月頃までであるということが分かりました。

 

つまり、両者が重なる3月の約1ヶ月間であり、この間を上手く調整できれば海苔加工排水を受入れても処理水の農業利用に支障を来たさないで済むことになります。さらに、処理水の利用促進を考えると、海苔の養殖には適度の栄養塩類が必要であり、しかも冬期間ですから、硝化能力の低下する低水温期にアンモニア態窒素で放流できることになります。処理水の農業利用についても事情は同じであり、用途に応じて供給水質の質を調整できれば、地域のニーズに合った水環境を創出できることが分かりました。

 

 “所変われば品変わる”といいますが、下水道の流入水質も放流環境のニーズも千差万別であり、それぞれの実情に応じた処理技術が必要になります。この場合の技術のポイントは、除去できるということは「除去しないこともできる」ということだと思います。

 

つまり、処理できる技術を持てば、その運転方法次第で放流水質を任意に調節できることになります。従来の一律放流基準から一歩踏み出した考え方として、下水処理場を地域水環境の調整弁として機能させることも可能になり、水環境全体の在り方を見直し、それに寄与する下水道の姿を設計することも重要な視点と考えます。

 

 “所変われば技術も変わる”、オーダーメイドを基本とする下水道技術の特徴を最大限に活かすように心掛けたいものです。

 

       (主任研究員 川口幸男)

 

 

 

 

━━☆★技術のポイント(部長コーナー) ★☆━━

 

<高度処理技術(3):既存施設を有効利用した高度処理技術の開発>

 

我が国の下水処理場数(平成20年度末)は2,120箇所で、このうち、活性汚泥法が約90%の1,917箇所となっています。二次処理に位置づけられる活性汚泥法のうち、標準活性汚泥法が676箇所(31.9%)、オキシデーションディッチ法が930箇所(43.9%)です。

 

活性汚泥法のポテンシャルを最大限に活用する処理も含めて、「三次処理」から「高度処理」へ定義が変わってきた中で、標準活性汚泥法(二次処理)を採用している既存施設を有効利用できる「嫌気無酸素好気法(平成20年度末 36箇所)」、「循環式硝化脱窒法(同 28箇所)」、「ステップ流入式硝化脱窒法(同 23箇所)」の採用事例が増加してきました。

 

 

(既設処理場の高度処理化の分類)

 

標準活性汚泥法を採用している既設処理場を高度処理化する場合、@循環式硝化脱窒法や嫌気無酸素好気法のような反応タンクの組合せを工夫した活性汚泥法の変法、A硝化細菌を固定する担体を好気タンクに保持する担体投入活性汚泥法(たとえば、ペガサス、リンポープロセス)、B最終沈殿池の替わりに膜処理法により固液分離を行う膜分離活性汚泥法 の適用が考えられます。

 

 

(反応タンクの組合せを工夫した新しい活性汚泥法)

 

多様な活性汚泥法の設計においては、各々の処理法の「浄化機能」に基づいて、経験的/理論的に一セットの設計因子・操作因子を定め、施設容量の設計、必要酸素量や余剰汚泥発生量の設定・管理、設備機器等の設計を行っています。すなわち、標準活性汚泥法には標準活性汚泥法に固有の組合せがあり、「既設処理場の最初沈殿池、反応タンク及び最終沈殿池の容積比率(バランス)をそのまま高度処理施設に適用することは出来ない。」ということです。

 

 

(施設間のアンバランスの解消する新技術)

 

 高度処理化時の施設間のアンバランスを解消するため、様々な新技術が開発されてきています。

 

 担体投入活性汚泥法では、担体を添加することで、増殖速度の小さな硝化細菌でも担体内あるいは担体上に存在することが可能となるので、MLSS濃度や反応タンクのHRTが標準活性汚泥法と同程度でよく、施設間のアンバランスが生じないようにすることが出来ますが、担体のスクリーン設備など付加設備が必要です。

 

一方、膜分離活性汚泥法(循環式硝化脱窒型)は、MLSS濃度が高濃度に維持できるため、反応タンク容量が限られる場合に適しており、標準活性汚泥法の反応タンクのHRTの範囲で、硝化・脱窒が可能です。また、最終沈殿池は要りませんが、膜分離装置や膜洗浄用の付加設備などが必要で、標準活性汚泥法等とは異なる運転管理手法が必要です。

 

なお、既設処理施設を有効利用した高度処理化では、@必要な省スペース、省エネの程度、A高度処理の対象項目(水質)とそのレベル、B処理水の再利用の有無とその利用方法などの目的を明確にした上で、採用可能な処理法候補を上げ、コスト比較も含め、最適な処理法を選定する必要があります。

 

 

        (技術開発部長 中沢)

 

 

 

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