地方共同法人日本下水道事業団Japan Sewage Works Agency

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技術開発

JS技術開発情報メールNo.69

 

日本下水道事業団(JS)

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      2007・8・7

    JS技術開発情報メール No.69

━━━━━━━━━━━━━━━━━◆◇◆JS技術開発部

 

(目次)

◆トピックス

<タイ国下水道 その3>

<真岡視察会報告>

<下水道展報告>

◇部ログ 10

<「アナモックス」って?>

◆いまさら訊けない下水道講座 26

<下水汚泥とバイオマス>

◇読み飛ばし/聞き流し(部長コーナー)

<−世のため、人のため−>

 

 

 

━━☆★ トピックス ★☆━━

 

☆ タイ国下水道 その3 ★

〜赤い大地と下水道〜

 

※関連写真が添付ファイルに掲載されています。

 

赤土は、火山灰土と風化土に分けられるそうですが、インドシナ半島中央部のタイ国内に観られる赤土は、ラテライトと呼ばれる風化土だそうです。カフェラテのラテは、ミルクの意味ですが、ラテライトのラテは、日干しレンガに由来しています。鉄の酸化成分とアルミの酸化成分が濃縮されており、湿っているときは柔らかいのですが、いったん乾燥すると更に硬くなる性質があります。タイ国内の建築資材として使われるレンガは、粘土を焼き固めた焼成製品ですが、広く一般の建設現場で見られます。

 

さて話は、下水道の話題になります。大地が全般的に真っ赤な色をしている一方で、流入汚濁負荷の高い運河や都市排水路、下水処理施設の流入下水の色は、ドス黒い、黒色を呈していることに驚嘆してしまいます。直感的に還元鉄であることが直ぐに思い当たります。地方部郊外の河川では、明るく澄んだ茶色の水辺なのに対して、流入下水や市内の水路は真っ黒です。やはり、赤土と関係していそうです。

 

以前、タイ国内の下水道施設において、重金属による汚染度合いを調査したことがあり、これに加えて管渠内堆積物の鉄分含有量を調査(5都市)しました。この結果、堆積物の固形物中に占める鉄含有量は、平均で3.2±1.2%(Fe/DS)であり、多いところでは、5%程度の含有量が確認されました。調査の趣旨としては、これら堆積物が、管渠の清掃や、降雨時のフラッシングにおいて、下水処理施設に流入した際、一時的に極度のCOD負荷となり処理に影響することが懸念されたためです。

 

このため堆積物のDS当たりCODcrも測定しました。堆積物中の鉄成分が全て硫化鉄などの還元鉄であると仮定した場合の、硫化鉄由来によるCOD値は、総COD値の4割程度と考えられました。このように還元無機物の流入が顕著な場合、その改質に与える影響は無視できないことがわかりました。

 

タイ国の経験から、下水中の無機物、特に鉄分は、呈色のみならず、管渠内での硫化水素の発生抑制や、リンの吸着にも影響しているようです。南国故に管渠のコンクリート腐食が激しいものと思われ勝ちですが、遮集管のレベルの関係で海水が大量に混入してくる海岸都市を除き、内陸都市では、概ね硫化水素によるコンクリート腐食に関する問題は少なさそうです。

 

タイ人の表層水(河川水、湖沼水)に対する感覚は、透明感のある水や自然由来の茶褐色の水はきれいな水であり、一方、有機物が混入しドス黒く還元された汚水や、家事や洗濯などで一度使用された水は、「ナム(水)シーヤ(壊れる)・・・壊れた水」と呼ばれます。このような赤土の多い国土では、水中ににじみ出た鉄成分が天然の指示薬となり、水辺の色を観察することで、よどみ具合や、有機物による汚染状況を推察することができます。(参考までに、タイ王国の国旗の赤色は、国土、民族の意味を示します。白は宗教、青は国王。)

 

           (技術開発課 田中松生)

 

 

 

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☆真岡視察会報告★

 

※視察風景写真が添付ファイルに掲載されています。

 

7月13日に、下水道協会関東支部の主催により技術開発実験センター(栃木県真岡市)の視察会が開催され、94名の協会会員が参加しました。

 

今回の視察会では、七輪で炭化汚泥の燃焼実験をし、お茶のお接待。視察対象は実験センターを利用して共同研究実施している「新たな生物反応等を用いた高度処理」、「大規模処理場の改築・高機能化等」、「新しい物理化学的リン除去の開発」など計5者の他、他施設等で研究を行っている内12者にも、現地説明・リーフレット配布等の協力を得て、各共同研究の施設・概要説明も行われました。

 

当日は台風4号の接近で雨が心配されましたが、幸いの曇り空、活発な質疑応答も行われ、参加者の皆様の新技術に対する関心の高さが伺えました。

 

技術開発部では今後も、各自治体・団体向けの施設見学を含めた新技術情報提供を行っていきますので、是非ご活用ください。

 

 

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☆下水道展報告★

 

※JSブースの様子が添付ファイルに掲載されています。

 

東京ビッグサイトで開催された下水道展に行ってきました。管きょメーカーの展示が目立ち、やはり下水道は管きょがメインであることを再認識しました。

 

時節柄か、地震関連のテーマが目を引き、管更生や点検の分野も盛況でした。実物の機械の展示は説得力があり、水処理設備やシールドマシンなど、見て・触れて分かるものに人気がありました。コンサルタントはアセットマネジメントが中心でした。

 

JSブースも盛況で、技術開発部のパンフレットを追加印刷したり、子供用のゴム製金魚が底をつき問屋へ買いに走るなど、うれしい悲鳴が上がっていました。

 

       (技術開発課長 藤本裕之)

 

 

 

 

━━☆★ 部ログ 10★☆━━

 

☆ 「アナモックス」って? ★

 

※実験室規模のアナモックス反応器写真が添付ファイルに掲載されています。

 

糸川:今回の部ログは、新たな窒素除去法「アナモックス」を採り上げます。今回は私が取りまとめ担当ですが、アナモックス関連調査の担当でもありますので、勝手に仕切らせて頂きます。

 

一同:よろしくお願いします。

 

糸川:アナモックスは、最近注目を集めている新しい窒素除去技術ですが、その凄さを解ってもらうためには、従来の窒素除去技術をふまえておく必要があります。皆さん、窒素除去技術については如何ですか?

 

一同:・・・。

 

糸川:・・・。それでは、従来の窒素除去技術について、簡単におさらいをしておきます。下水中の窒素は、大半がアンモニア性窒素、残りが有機性窒素ですが、有機性窒素は生物処理の過程でアンモニア性窒素に変化しますので、処理のスタートはアンモニア性窒素と考えて頂いて構わないです。

で、まず、「硝化」と呼ばれる微生物反応により、このアンモニア性窒素を硝酸性窒素へ変換します。次いで、「脱窒」と呼ばれる反応により、硝酸性窒素を窒素ガスへと変換します。窒素ガスは空気の主成分で無害ですので、これで窒素が除去された、ということになります。ここまで、よろしいですか?

 

編集委員:(ぺらぺらとよく喋るわねぇ、このヒト。)

 

糸川:このように、排水から窒素を除去しようとする場合、微生物による硝化・脱窒という二つの反応を利用するのが主流です。

ところが、硝化には酸素が必要だが脱窒は酸素があると進まない、脱窒には有機物が必要だが硝化には不要で場合によっては有害、など、この二つの反応は全く異なる条件で起こります。

ですので、硝化を進める好気タンクと脱窒を進める無酸素タンクを組合わせなければいけないなど、ふつうに有機物だけを除去する技術に比べてプロセスが複雑になり、コストも余計にかかるのがふつうです。

 

編集委員:そろそろアナモックスの話を・・・。

 

糸川:あ、はい。え〜、アナモックスは、この硝化・脱窒とは全く異なる経路で窒素を除去する反応でして、アンモニア性窒素と亜硝酸性窒素を直接窒素ガスへと変えてしまいます。1990年代に入ってから発見された新しい反応です。

 

編集委員:どこで発見されたんですか?

 

糸川:オランダのデルフト工科大学のグループが、排水処理プラントでの窒素の動きを詳細に追跡する中で見出し、1995年に最初の報文を公表しています。

 

編集委員:自然界でも起こっているんですか?

 

糸川:土壌や海洋など、様々な場所でアナモックス反応が起こっていることが知られるようになってきています。窒素というのは地球規模で循環している物質ですが、アナモックスというのは、従来の窒素循環の図式を書き換えるくらいの大発見と言えます。

 

編集委員:このような大発見が排水処理施設から出てきた、というところが興味深いですね。

 

糸川:現在では、アナモックス反応を担う細菌が幾つか同定され、その性質が詳しく研究されています。合成基質などで培養しますと、赤いグラニュールが形成されます。また、本反応を利用した排水処理プロセスについてもオランダを中心に検討が進み、2002年にはロッテルダムの下水処理場で最初の実プラントが稼動しています。

 

編集委員:赤いですね〜。でも何故、アナモックスと呼ぶんでしょう?

 

糸川:英語で「Anammox」と書き、「嫌気性アンモニア酸化(ANaerobic AMMonium OXidation)」の頭文字から来ています。

 

編集委員:従来の硝化・脱窒と比べると?

 

糸川:有機物が無くても脱窒ができる、というのが最大の特徴です。従来の脱窒ですと、有機物が足りない場合にはメタノールなどを外部から添加する必要がありましたので、これは大きなメリットです。

ただし、アナモックスではアンモニア性窒素に加えて亜硝酸性窒素が存在しないといけないため、前処理が必要になります。

 

編集委員:具体的な方法は?

 

糸川:硝化を使います。硝化が完全に進むと硝酸性窒素ができますが、途中で止めて亜硝酸性窒素を生成させる、ということが可能です。ここで酸素が必要になりますが、途中で止めますので、従来の硝化に比べると必要酸素量が半分程度で済みます。

 

編集委員:従来の硝化・脱窒よりも低コストになると・・・。

 

糸川:はい、原理的には低コスト化が期待できます。ただし、アナモックス反応は25℃以下の温度条件では急激に活性が低下しますので、現在では、下水からの窒素除去というよりは、嫌気性消化の脱離液のように、水温と窒素濃度が高く、一方で脱窒を行うには有機物が不足するような排水への適用が中心になっています。

 

編集委員:し尿処理や工場排水処理などにも可能性がありそうですね。ところで、硝化・脱窒ですと、温室効果ガスの亜酸化窒素が生成される恐れがありますが、アナモックスはどうなんでしょうか?

 

糸川:現在提案されている反応経路には亜酸化窒素が含まれておらず、また実際に発生しないことが実験的に確かめられています。

 

編集委員:技術開発部ではどんな研究をしているんですか?

 

糸川:民間企業との共同研究を中心に、嫌気性消化後の脱水ろ液を原水とした実証実験を行っています。このデータを元に、設計・維持管理手法を取りまとめていく予定です。

 

編集委員:あの赤いやつを見てみたいですね。

 

糸川:実排水を使うとあんな色にはなりませんが、いつでも見学に来て下さい。

 

一同:今日はどうもありがとうございました。よく解りました。

 

編集委員:僕は、前半の硝化・脱窒のところが一番勉強になりました!

 

糸川:おい・・・。

 

        (講師・編集:糸川浩紀)

 

 

 

 

 

 

━━☆★ いまさら訊けない下水道講座 26 ★☆━━

 

<下水汚泥とバイオマス>

〜下水汚泥はバイオマスエネルギーの宝庫!〜

 

※PDFファイルで全文が添付されています。

 

近年、温室効果ガスの大量排出による地球温暖化が問題となっておりますが、その対策の一環としてバイオマスの有効利活用が注目されるようになってきました。そもそもバイオマスとは何なのでしょうか?

 

バイオマス・ニッポン総合戦略ではバイオマスを「再生可能な、生物由来の有機性資源で化石資源を除いたもの」と定義されています。元々有機物には二酸化炭素やメタンなど温室効果ガスの一因となる炭素が含まれているわけですから、バイオマス中の炭素を燃焼させても大気中の温室効果ガスは増えないといわれております。これをカーボンニュートラルといいます。

 

近年この概念に基づき、バイオエタノールが注目されておりますが、トウモロコシやサトウキビを原料としたバイオエタノールの場合、これまで食料として栽培されていた植物を対象としているため、生産量が追いつかず、世界的にこれらバイオマスを原料とした食物が高騰しているという問題が生じています。それでは下水汚泥はどうでしょうか?下水汚泥には約80%の有機物が含まれております。そのエネルギー価値について考えてみましょう。

 

我が国では年間217万dst(含水率80%で換算すると、1085万t、東京ドーム約9杯分に相当)の下水汚泥が発生しており、下水汚泥が有するエネルギーを全て回収した場合、原油換算で約94万kl、我が国の年間原油使用量の約1.5日分に相当します。

 

しかしながら、下水汚泥のエネルギー利用率は約13%に留まっているのが現状です。今後下水汚泥を対象とした高効率のエネルギー回収技術を開発すれば世界的に注目される技術になるかもしれません。

 

(技術開発課 水田健太郎)

 

 

 

 

 

━━☆★ 読み飛ばし/聞き流し(部長コーナー) 3 ★☆━━

 

― 世のため、人のため ―

 

JS技術開発部メルマガをご愛読いただき、ありがとうございます。今年は、東京ビッグサイトで開催された下水道展、暑い中、JSブースにも多数のお立ち寄りをいただき、ありがとうございました。新しい発見はあったでしょうか?

 

再び、最近読んだ本の話です。それは、新原浩朗(にいはら・ひろあき)さんの書かれた「日本の優秀企業研究(企業経営の原点−6つの条件)」(日経ビジネス人文庫、2006年6月第1刷発行)です。2003年(平成15年)に刊行された本が文庫化されたものです。

 

バブル崩壊後の失われた10年といわれる不況時代をも乗り越えた日本の優良企業の特質を研究し、まとめた本であり、次のような6つの条件を挙げています。

 

 

第一の条件 分からないことは分けること

 

第二の条件 自分の頭で考えて考えて考え抜くこと

 

第三の条件 客観的に眺めて不合理な点を見つけられること

 

第四の条件 危機をもって企業のチャンスに転化すること

 

第五の条件 身の丈に合った成長を図り、事業リスクを直視すること

 

第六の条件 世のため、人のためという自発性の企業文化を埋め込んでいること

 

 

7月1日付でJS理事長に就任した石川忠雄新理事長は、就任の共同記者会見で、「地方公共団体の支援という、事業団の原点とも言うべきものを見失ってはならない。」と述べています。

 

技術開発部も地方公共団体の下水道事業を支援する新技術の開発、実用化を「世のため、人のため」の視点を忘れず、職員一丸となって取り組んで行くことが大切と考えています。

 

                 (河井竹彦)

 

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