地方共同法人日本下水道事業団Japan Sewage Works Agency

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技術開発

JS技術開発情報メールNo.75

 

日本下水道事業団(JS)

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      2008・2・6

    JS技術開発情報メール No.75

━━━━━━━━━━━━━━━━━◆◇◆JS技術開発部

 

(目次)

◆トピックス

<タイ国下水道公社での活動>

<記者発表1.15 平成20年度公募型共同研究募集開始>

◇幹部ログ

<臭気判定士のお仕事>

◆いまさら訊けない下水道講座 32

<リンはマルチプレイヤー>

◇下水道よもやま話

 <下水処理場の巡視点検>

◆読み飛ばし/聞き流し(部長コーナー)

<− シロキサン −>

 

 

━━☆★ トピックス ★☆━━

       

☆ タイ国下水道公社での活動 ★

 

         高橋春城(元技術開発部長)

 

タイ国下水道公社(Wastewater Management Authority: WMA)は、1995年WMA設置法によって設立された法人で、タイの地方都市の下水道事業を代行、支援するなど、JSと同じような役割を担っています。

 

私は、2006年4月から2007年11月まで、ここでJICAの下水処理場運営改善(IST)プロジェクトのチーフアドバイザーとして勤務しました。

 

タイの下水道事業は、地方分権政策のもとで地方自治体が事業主体として責任を持ち、天然資源環境省が規制部門として水環境改善政策や下水道施設改善計画を立案・実施し、WMAは実施部門として地方自治体の支援・代行をしています。

 

事業主体として地方自治体が抱える問題は、下水処理場の維持管理・改良、過去に建設された施設の不具合、管渠システムの不備等の技術的、ハード的な課題から、下水道管理要員や維持管理費用の不足、下水道使用料金制度の未実施、住民や自治体幹部の理解不足等の経営的、ソフト的な課題まで多岐にわたっています。

 

下水道法や下水道事業補助金制度など恒久的な国の行政・財政面でのサポートが十分でない中、WMAは専ら地方自治体を支援する組織として存在しています。しかし、そのWMA も12年ほどの歴史しかなく、職員は約100名、技術者は25名程度で経験者も限られるなど、非常に心もとない状態でした。

 

ISTプロジェクトの支援は技術面に限られていましたが、このようなWMAをどのように強化して地方自治体の期待に応えられるようにするかが、プロジェクトの究極の課題でした。2004年5月から3年半にわたるプロジェクトの活動は、WMAの強化に大きく貢献することができたと思います。

 

具体的には、@既設の稼働中あるいは休止中の処理場を対象に、地方下水道の実情に即した効率的な維持管理技術、機能回復ノウハウをOJTでカウンターパートに移転し、Aこれらの技術・ノウハウを外部委員会でオーソライズして9種類12冊の技術資料としてまとめるとともに、Bカウンターパートを講師に立てて地方自治体職員研修を行い、さらにCこれら技術情報をデータベース化し、WMAのホームページからアクセス出来るようにしました。その他、D下水道研修センタープロジェクト(1995〜2000年)で使用されていた水質分析機器・研修設備を活用できるように修復し、水質分析要員も育成しました。これらの活動は、なんとJS業務に似ていることでしょう。すなわち、引渡し施設の運転管理指導、事後点検であり、ノウハウのフィードバック、技術指針類の作成であり、試験研修業務です。

 

一方、WMAも評議委員会主導で自ら組織・業務改革に乗り出しています。このコンセプトは、JS をモデルとして下水道事業のサービス提供者になるというものです。そのために、受託都市数を12から58に増やすというWMA運営4カ年計画(07年6月)を作成し、WMA業務促進セミナー(07年6月)を実施し、営業の強化、技術者の増員、間接部門の活用、維持管理の一部直営化等の施策を実施してきています。すでにこの半年で、受託都市数は20近くまで増えています。

 

これらの動きは、規模の違いこそあれ、2001年以降のJS改革の歩みを見ているようでした。私も上記セミナーの場でJS業務とJS改革の内容を説明し、さらに11月には今後のWMAへの期待と提案を行いました。帰国後、WMAは、執行部の刷新、技術職員の増強などを具体化するなど、着実に成果を上げています。

 

今後は、タイの下水道事業の危うさや地方自治体の脆弱さなど心配な面は多々あるのですが、WMAの能力アップや彼らの努力・新たな展開に期待していきたいと思います。

 

 

     ――――――――――

     

 

☆ 記者発表1.15  ★

 

<平成20年度公募型共同研究募集開始>

 

平成20年度公募型共同研究が1月15日に記者発表され、共同研究者の募集が開始されました。募集課題等詳細につきましては、JSホームページ/技術開発部を参照してください。

 

 http://www.jswa.go.jp/gikai5/0115boshu.htm

 

 

 

━━☆★ 部ログ 15 ★☆━━

 

< 臭気判定士のお仕事 >

 

三宅:今日は、嗅覚試験や臭気判定士の仕事について、話題提供をさせて頂こうと思います。まず、みなさんの鼻が正常か調べてみたいと思います。(基準臭を嗅ぎながら)平成8年に悪臭防止法が改正され、今まで物質毎に濃度の規制があったのが、複合臭にも対応するということで嗅覚試験が公定法に導入されました。これは、ヒトの鼻を使って分析するものなので、まず、正常な嗅覚のヒト(パネル)を選定しなくてはなりません。

 

課長:これは、麹の臭いだね。3番は嫌な臭いだ。

 

三宅:課長の鼻、良いですね。1番は花びらみたいな甘い臭いがします。3番は靴下の臭いかな。基準臭には、5物質あって、この所定濃度がわかれば、パネルになる資格が持てます。

 

編集委員:嗅覚試験が導入された経緯は?

 

三宅:悪臭防止法では特定物質を徐々に増やして、22物質まで対象としました。しかし、悪臭発生源の多様化で特定物質による濃度規制のみでは対応しきれない現実があります。悪臭の苦情や問題は減らないということもあり、複合的な臭気への対応として嗅覚試験が導入されました。同時に臭気判定士という制度も導入されました。

 

三宅:悪臭防止法には3つの規制があって、敷地境界が1号規制基準、煙突の排出口が2号規制基準、排水が3号規制基準です。この3種に対して、臭気強度2.5から3.5の範囲で物質毎の濃度や嗅覚試験での臭気指数が規制値として条例で定められます。

 

編集委員:臭気強度と物質濃度の関係はどうやって出したのですか?

 

三宅:調香師が各物質を嗅いだ感覚(臭気強度)と物質濃度(ガスクロの値)の平均です。

 

編集委員:ガスクロでの結果より、人間の感覚が良いというのは?

 

三宅:実際の臭気物質は数多く、たばこ1つとっても4000種程度含まれていると言われます。また、相乗効果や相殺効果によって複合臭も変化するので、実際の臭いを判別できるヒトの嗅覚が用いられるようになってきています。

 

編集委員:プロの臭気判定士の仕事は?

 

三宅:臭気判定士の仕事は、嗅覚試験の仕切り屋ですが、求められているところでは、臭気の判別や悪臭対策まで幅広い臭気のプロが求められています。

公定法の嗅覚試験としては「三点比較式臭袋法」が定められています。やり方は、嗅覚が正常なパネル6人以上に3つの臭袋を嗅いで頂き、臭いのある1つを当ててもらうというものです。3号規制基準は「三点比較式フラスコ法」と言って、3つのフラスコに水を入れ、内1つに試料を入れて見た目や温度差で識別できないようにして嗅ぎ分けてもらいます。臭袋もそうですが、見た目に差があるとわかってしまうので、気遣いが必要です。もう1つ重要なのは、嗅覚疲労というものがあります。同じ臭いに長時間暴露されたり、強い臭いを嗅ぐと鼻が慣れてしまう嗅覚疲労が生じます。そのため、パネルに渡す臭袋も、濃すぎて嗅覚疲労が起きない程度で臭いがわかるものに調整し、除々に薄めて行き、臭いを感知できる閾値を求めます。その時の希釈倍率から臭気指数を求めます。

 

編集委員:Hさんの好きなラーメン屋さんも臭いがキツイから問題かも。

 

H:良いと思う臭いも臭気指数だとひっかかるのかァ。

 

編集委員:良い臭いも沢山嗅いでいると、悪臭に。嗅覚だけでなく、疲労して使い物にならなくなる前の見極めが重要ですね。使い捨てにされないように...

 

 

(講師・編集:三宅十四日)

 

 

 

 

━━☆★ いまさら訊けない下水道講座 32 ★☆━━

 

<リンはマルチプレイヤー>

 

※ PDFファイルで全文が添付されています。

 

食品に関連した中の「有機リン化合物」が起こした事件が巷を騒がせています。ご存知のとおり、リンは下水処理にとって切っても切り離せない水質指標のひとつです。下水道の仕事に携わって7年、筆者はこれまで「リン」の一言で片付けてきましたが、この事件を機に(動機は不純ですが)リンについてすこし調べてみました。

 

地球上のリンのほぼ全量は、酸素と結合した状態の「リン酸」として存在します。そして、リン酸は存在形態に応じて、水溶液中にイオンの形で存在する「溶存態リン」、土壌や堆積岩などに含まれる「鉱物態リン」、生物体中などに有機物化合物として存在する「有機態リン」(「有機リン化合物」と同じ意味です。)の3種類に分類されます。

 

これら3種類のリンは、土壌中のリン酸が水中に溶け出し、それを陸上植物が摂取し、食物連鎖により最終的に土壌有機物(生物遺骸)になるというように土壌溶液−陸上生物−土壌有機物を循環しています。下水道は、この大きな自然循環路の中の細いバイパスといえます。

 

これら自然循環の外に、殺虫剤や農薬など人工的に合成された有機態リンがあります。かの「サリン」も有機リン化合物で、有機リン系殺虫剤の開発過程で発見されたそうです。

 

ちなみに、生物の遺伝情報を担う「DNA」も、糖とリン酸、塩基で構成されています。すなわち有機リン化合物です。猛毒ぶりを発揮することもあれば、生物の遺伝情報をも司る。なんとマルチな働きぶりでしょう。

 

            (技術開発課 茨木 誠)

 

 

 

━━☆★ 下水道よもやま話 ★☆━━

 

< 下水処理場の巡視点検 >

 

下水処理場の一日は、夜勤者との業務の引継ぎから始まります。夜勤者は、前日の昼勤者から業務を引き継いでから、明くる日の朝までの処理施設の運転状況、例えば、夜間の揚水量、反応槽MLSS濃度、SVI、放流水質(COD、N、P等)を報告します。

 

そして機器の故障等が発生した場合にはその対処方法を、今日の昼勤者に申し送ります。これらの事項を報告するため、施設の運転状況を把握していなければなりません。そのためには施設の巡視点検が必要となります。

 

巡視点検は、昼勤2回、夜勤2回ぐらい行っています。

 

巡視点検は主に五感を使って行われます。異音・異臭・異常振動そして異常過熱等がないか、稼動している機器を1台ずつチュックしていきます。また、現場に設置されている指示計により、電流値、流量等が正常な値を指示しているか確認します。

 

水処理施設担当者は、反応槽、返送汚泥等の水汲みをし、SVの測定をします。また、放流水の透視度も測定します。

 

そして、忘れてはならない重要な仕事があります。それは、施設の清掃です。特に汚れる除塵機、スクリーンかす集荷コンベヤ等の清掃です。汚い物が流入してくる場所ですから、小まめに掃除をしないと、直ぐに汚い・臭い不衛生な下水処理場となってしまいます。

 

以上が下水処理場の巡視点検業務の一部です。ピカピカ光った仕事では無く地味な仕事だと思います。しかし、無くてはならない重要な仕事だと私は考えます。

 

今日も黙々と下水処理場の運転・維持管理業務をしている、我々の仲間にエールを送りたいです。

 

 (総括主任研究員 遠山晃二)

 

 

 

 

 

━━☆★ 読み飛ばし/聞き流し(部長コーナー)10 ★☆━━

 

― シロキサン ―

 

JS技術開発部メルマガをご愛読いただき、ありがとうございます。雪の節分、立春が過ぎても寒い日が続く今年の関東平野です。皆様の地域はいかがでしょうか?

 

今年7月に北海道で開催予定の洞爺湖サミットでは、地球温暖化防止対策が主要なテーマの一つとされています。下水道分野でも化石燃料エネルギーの代替として下水汚泥から炭化燃料や消化ガスを取り出し、有効利用する技術開発、事業化が活発に行われています。

 

汚泥の嫌気性消化ガスを有効利用する際に障害となる物質として、硫化水素とともに「シロキサン」が知られています。シロキサンは、もともとは、シャンプーやリンスなどの頭髪仕上げ剤に含まれる「シリコーン」(シリコンとは別物)が原因物質のようです。シリコーンは、櫛のとおりをよくし、さらさら感を得るために用いられています。

 

日常生活に利便を与えるシロキサンは、下水道を通じて処理場へ流入し、下水汚泥や嫌気性消化ガスに移行し、燃焼すると酸化分解され硬い結晶シリカとなり、ガスエンジンの金属部分などを損傷します。シロキサンの除去には、活性炭吸着などが知られていますが、安いコストではないようです。

 

富栄養化対策の一環で「無リン洗剤」の開発、普及が市民運動レベルでも進められたように、「シロキサン」対策として発生源対策が可能でしょうか?シリコーンと同じ働きをする代替の無害で安価な物質が見つかるか?若い女性を巻き込んだ地球環境を守る市民運動となりうるか?などが、鍵になるとは思いますが、……。

 

                    (河井竹彦)

 

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