地方共同法人日本下水道事業団Japan Sewage Works Agency

サイト内検索

ホーム > 技術情報・研究 > メールマガジン > メルマガバックナンバー > JS技術開発情報メールNo.83

技術開発

JS技術開発情報メールNo.83

 

日本下水道事業団(JS)

◆◇◆━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

      2008・10・7

    JS技術開発情報メール No.83

━━━━━━━━━━━━━━━━━◆◇◆JS技術開発部

 

(目次)

◆トピックス

<IWA世界水会議>

<台湾から真岡技術開発実験センターを訪問>

<技術開発部年報・部報(平成19年度)を発行>

◇部ログ

<「ぞうりゅう」で水処理?>

◇いまさら訊けない下水道講座 40

<「増殖」−51:49勝敗の行方は?−>

◆下水道よもやま話

<北京オリンピックで膜処理が活躍>

 

 

 

━━☆★ トピックス ★☆━━

 

☆ IWA世界水会議 ★

 

IWA(国際水協会)の世界水会議が、9月7日〜12日にかけてオーストリアのウィーンで開催されました。

 

世界水会議は、IWAの総会と言える会議で、2年に一度開催されており、水環境関連企業により展覧会も併設されています。今回の会議には94ヶ国から約2,900名の参加者があり、これまでの世界水会議で最も多い参加者数となりました。

 

会議では4日間にわたり、上下水道や水環境保全をはじめ、経営や財政の分野までも含めて、多数の研究発表(口頭発表とポスター発表)、様々なワークショップや専門家グループの会議等が開催されました。

 

JSからは村上が参加し、「ステップ流入の均等化による生物学的窒素除去の改善」というテーマで口頭発表を行いました。また、この他、「低MLSS運転によるMBRのエネルギー消費量削減」及び「活性汚泥モデル利用のための実務的ガイドライン−JSプロトコル−」という2テーマについて、5分間のショートプレゼンテーション付ポスター発表も行いました。

 

研究発表には色々と興味深いものがありましたが、中でもオーストリアから、雨天時活性汚泥法に関する研究発表があったのは驚きました。

 

原理は、日本で行なわれている雨天時活性汚泥法と同じなのですが、雨天時のバイパス先は反応タンク末端部ではなく、最終沈殿池に入る直前の水路や分配槽に入れるという点が異なっています。これで処理水質的には問題ないのか気になりますが、大丈夫ということでした。また、消毒はどうするのかを質問しましたが、オーストリアではほとんど消毒はしていないということでした。この他にも、雨天時には流入水をバイパスするという発表がいくつかあり、遠く離れた場所で同じような発想が出てきているのは面白いと感じました。

 

しかしながら、何といっても腰を抜かしそうになったのは、処理水による人工雪の発表でした。

 

カナダのリゾート地の小規模な下水処理施設ですが、冬期には処理水をスノーマシンに入れて、高圧スプレーにより人工雪にするそうです。この雪は、特にスキー場に使う訳では無く、単に積んで置くそうですが、そうしておく内に雪中に含まれる不純物が次第に下降してゆき、また、雪中の酸素で分解が進むそうです。すなわち、後処理効果を期待して人工雪にしているということでした。世の中には、まだまだ、思っても見ないような処理技術があるものです。

 

最終日は、ウィーン市の中央処理場(200,000m3/日)の見学でした。ここは、EU指令により、窒素除去を行なわなければならなくなったため、二段活性汚泥法を採用し、旧施設を一段目とし、新施設のOD型反応タンクを付加して二段目として窒素除去を達成したという再構築の事例です。

 

汚泥は、焼却−埋め立て処分ということで、EUでも汚泥焼却炉は増加の傾向のようです。また、ここで驚いたのは、この規模の処理場でも消毒は行なっていないということでした。放流先は、「美しき青き」ドナウ川で、水浴場もあるのですが、ドナウ川の水量が圧倒的に大きく希釈率が高いために、衛生上の基準は満足しており、消毒は必要ないということでした。EU諸国では一般的に、下水処理水の塩素消毒を嫌がる傾向がありますが、まさにその典型だと思いました。

 

さて、併設の展覧会では、このような国際会議でいつも大ブースを出す常連のスエズやヴェオリアといったフランス企業に加えて、シーメンス社が大ブースを出しているのが目を引きました。シーメンス社は、最近、膜企業を始め、様々な水関連企業を傘下に収め、水の総合企業を目指して活発な営業活動を世界で展開しており、展覧会のブースでもそのあたりの雰囲気を感じました。

 

日本からは、日本水道協会や関連企業数社が共同で日本パビリオンを出展していました。このため、水道関係の日本からの参加者はかなり多かったのですが、下水道では、公的機関からは私と(独)土木研究所3名の計4名だけで、水道側の盛り上がりに比べて一抹の寂しさを感じた会議でした。

 

(技術開発部長 村上孝雄)

 

 

 

 

 

 

☆ 台湾から真岡技術開発実験センターを訪問 ★

 

9月10日全国下水道デーに、台湾からの技術者3名が技術開発実験センターを訪問されました。この視察は、JICA研修の一環で、研修を担当する(財)造水促進センターの依頼によるものです。

 

3名は水道関係の技術者でしたが、下水処理についても関心が高く、特に膜分離活性汚泥法に興味を持ち、熱心に質問をされていました。技術開発実験センターそのものにも興味があり、実験センターの目的や運営方法についても質問を受けました。

 

台湾で技術開発実験センターを企画する際には、JSから専門家を派遣して欲しいという、リップサービスもあり、視察に満足された様子でした。

 

 

 

 

☆ 技術開発部年報・部報(平成19年度)を発行 ★

 

JS技術開発部では、毎年度、1年間の活動内容をとりまとめた「技術開発部年報・部報」を発行しています。このたび、平成19年度の年報・部報がまとまり発行いたしました。

 

年報では、その年度の各研究テーマの概要のほか、組織や予算、技術評価委員会などの動き、発表活動の状況、実験施設の概要などを収録しています。

 

部報は、前年度のJS技術開発の成果集として、昭和49年(1974年)から毎年発行しているもので、JS固有の研究課題8件、国土交通省からの受託研究課題のうち6件、地方公共団体からの受託研究課12件について、平成19年度成果を収録しています。

 

JSへの補助金交付団体・委託団体等の地方公共団体の方と国の関係機関には、発行の都度、JSから送付しています。業務の参考にしていただけば幸いです。

 

 

 

 

 

━━☆★ 部ログ ★☆━━

 

☆ 「ぞうりゅう」で水処理? ★

 

編集委員:今回の部ログは水処理グループの担当です。猪木博雅主任研究員に講師をお願いし、今年から検討を始めた「ぞうりゅう」を採り上げます。それでは猪木さん、簡単に概要説明をお願いします。

 

猪木:「ぞうりゅう」は、粒を造る(造粒)と書きます。微生物が集まった小さい粒を造り、これを使って排水を処理しよう、という技術の検討を始めています。英語では「グラニュール」と呼ばれます。

 

一同:グラニュール・・・

 

編集委員:グラニュー糖みたいなもんですかね?※

 

編集委員:私の調べでは、造粒自体は、食品、薬品、化学肥料、製鉄など、様々な工業分野で使用されるプロセスのようですね((`・ω・´) シャキーン)。

 

編集委員:ガ━━Σ(゚Д゚|||)━━ン!!。

 

猪木:はい。排水処理に限った技術ではありませんが、ここでは、微生物が自ら粒を造る「自己造粒」というものを使った排水処理技術の話とさせて頂きます。

 

編集委員:酸素が無い嫌気条件の排水処理では、UASB法が有名だよね。

 

猪木:そうですね。嫌気では古くから使われてきましたが、最近になって、ふつうの活性汚泥法のように空気を吹き込む好気条件での処理で自己造粒を使ったものが出てきており、我々のところでも実験を始めようとしています。

 

編集委員:どんなメリットがあるんですか?

 

猪木:まず、微生物の密度を高くできますので、反応タンク容量を小さくできます。また、グラニュールは沈みやすいので、処理水とグラニュールを簡単に分けることができます。

 

編集委員:ふつうの活性汚泥と比べると・・・。

 

猪木:活性汚泥法では、最終沈殿池で1〜2時間かけて汚泥を沈めますが、グラニュールは1〜2分で沈んでしまいます。

 

一同:オォォーーー!! w(゚ロ゚;w(゚ロ゚)w;゚ロ゚)w オォォーーー!!。

 

編集委員:最終沈殿池は付けるんですか?

 

猪木:実は、グラニュール自体は簡単に沈むのですが、グラニュールから剥がれた微生物などは簡単には沈まないので、沈殿池を設けるのがふつうのようです。

 

編集委員:そんなに上手くグラニュールができるんでしょうか?

 

猪木:固くて沈みやすいグラニュールが造られる条件を見出すのが、開発のポイントになりそうです。それから、メリットの続きですが、グラニュールの外側と内側とで環境が違うので、異なる種類の微生物が共存できるという点も指摘されています。

 

編集委員:グラニュールの大きさは?

 

猪木:数ミリくらいでしょうか。

 

編集委員:それくらいの粒が沈む様子は、展示会受けしそうだね。

 

編集委員:見てて楽しそうね。

 

編集委員:でも、「じこぞうりゅう」という響きがね・・・。

 

編集委員:僕は、象と龍でカッコよいと思いましたけど(( ̄ー ̄) ニヤリ)。

 

編集委員:で、デカい動物だからっすか・・・((# ゚Д゚) ムキッ)。

 

編集委員:ふるった名前を考えないとね。

 

編集委員:「ポニョ」とかいいなぁ・・・。

 

編集委員:叱られますって、宮崎センセに(その前に実験だろ〜が (,,#゚Д゚))。

 

※ 部ログ作成委員会ではこのコメントは完全に流されたが、グラニュー糖のグラニュー(granulated)はグラニュールと同語源であり、必ずしも的外れなコメントだった訳ではない点を本人の名誉のために補足しておく。

 

          (編集:糸川 浩紀)

 

 

 

 

 

━━☆★ いまさら訊けない下水道講座  40 ★☆━━

 

<「増殖」−51:49勝敗の行方は?−>

 

※ PDFファイルで全文が添付されています。

 

下水処理で見出される微生物は何十万種ともいわれますが、その中でアンモニアを亜硝酸や硝酸に酸化して増殖する硝化細菌はわずか数種類しかいません。何故でしょうか?

 

活性汚泥モデルASM2によると、硝化細菌の増殖には溶存酸素とアンモニア性窒素、りん酸イオン、アルカリ度の4つが必要です。アルカリ度を炭酸イオンと考えれば、何れも単純な無機化合物ですから、関与する反応機構のバリエーションも多くはありません。

 

今、同じ4つの材料を使うAとBの2種類の微生物がいて、材料を取り込む速さは全く同じで、増える割合がA:B=α:βと仮定します。ここで、水槽内の生物の数を一定にするため、1回毎に増殖した分を引き抜くことにし、最初に水槽内のAの割合をM0として飼い続けたときのAの割合の変化を考えてみます。

 

最初はAの割合がM0ですから、Bの割合は1−M0、1回増殖が終った後のAの割合はM1=M0×α÷(M0×α+(1−M0)×β)、n回目のAの割合Mnは、1回前のAの割合をMn−1とすれば、Mn=Mn−1×α÷(Mn−1×α+(1−Mn−1)×β)で表わされます。ここで、AとBの増える割合をα:β=51:49、最初の水槽内のAの割合を50%と仮定して計算してみます。Aの割合は、最初の50%が、5回目54%、10回目59%、20回目68%、50回目88%、100回目98%、200回も繰り返すとほぼ100%になってしまいます。

 

生物の世界ではこのような競争が何千万年、何億年という長い間繰り返されている訳ですから、当然ナンバーワンしか生き残れないことになります。それでは何故、同じ材料を使う微生物が複数存在できるのかというと、環境・生育条件の変化に伴ってナンバーワンが入れ替わるということになります。こう考えると、下水処理での硝化細菌の種類の少なさが理解できると思います。

 

地球上の生物は一様に太陽エネルギーの恩恵を受けています。地球が丸かったこと、地軸が傾いていること、地球の中心が熱いことなどが、多様な環境条件や環境の変化を生み出し、様々な生物がナンバーワンになれるチャンスを与えてくれていると言えるでしょう。

 

     (主任研究員 川口幸男)

 

 

 

 

 

━━☆★ 下水道よもやま話 ★☆━━

 

<北京オリンピックで膜処理が活躍>

 

※PDFファイル図が添付されています。

 

北京オリンピックが終わってから、まだ2ヶ月は経っていないのですが、何だか随分と前のことだったような気がしています。

 

さて、様々なドラマがあった北京オリンピックですが、膜処理技術が裏方として大活躍していたことはご存知でしょうか?

 

北京は、南水北調計画があることからもわかるように、もともと水事情が厳しく、水源池もかなり汚濁が進んでいる状態だそうです。そこで、オリンピックに備えて水資源の不足を補うために、下水処理水の再利用促進が打ち出だされ、処理水の50%再利用が目標にされました。

 

ここで、活躍したのが膜処理です。市内の複数の下水処理場に膜処理が導入され、例えば「清河」処理場(80,000m3/日)では、処理水を膜処理し、これをオリンピック公園に送水しました。これによって、より多くの水道水を本来の目的にまわせるという訳です。

 

また、膜により処理されたのは下水処理水のみではなく、河川水までその対象となりました。オリンピック用ボートコースの水質が良くないということから、一日100,000m3/日もの河川水を膜処理により浄化してボートコースに供給するという計画がたてられ、短期間の内に施設が建設されました。図は、その施設「湯楡河」膜処理施設ですが、河川水は一旦、ラグーンに入れて前処理、その後、凝集沈殿した後に膜分離活性汚泥法施設で処理され、河に放流されてボートコースに供給というフローです。

 

凝集沈殿後の河川水は、BODが13mg/L、SSが30mg/L、アンモニア性窒素が25mg/L程度ということですから、二次処理水よりもかなり悪いというレベルの水質です。膜モジュールは日本のA社製中空糸膜が採用されましたが、工事もかなりの突貫工事だったそうで、担当者は相当苦労されたようです。

 

テレビ中継ではもちろん全くわかりませんでしたが、ボート競技の裏ではこのような施設が、一日100,000m3もの河川水を処理していたというわけです。水質が悪いとは言っても、下水そのものに比べるとかなり濃度は低いのですが、このような水でも活性汚泥処理ができるということには感心しました。それにしても、日本ではちょっとこのような施設は作れそうにないですね。

 

           (技術開発部長 村上孝雄)

 

 

◆◇◆━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

 

◇このメルマガへの感想・お気づきの点等を是非

  mailto:gikaiinfo@jswa.go.jpへお寄せください。

 

 ◆このメルマガは、登録された国及び地方公共団体へ配信

しています。

脱退および登録情報の変更はmailto:gikaiinfo@jswa.go.jpへ

 

 ◆日本下水道事業団ホームページへは http://www.jswa.go.jp

  バックナンバーもご覧になれます。

 ◆◇◆━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

JS技術開発情報メール

 発 行:JS技術開発部 

 ◆Copyright (C) 2008 日本下水道事業団

━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━◆◇◆