地方共同法人 日本下水道事業団

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ご寄稿 Contribution

国土交通省 水管理・国土保全局 下水道部長 松原 誠様
国土交通省 水管理・国土保全局下水道部長 松原 誠 様

 日本下水道事業団(JS)が創立50周年を迎えられましたことを、心よりお喜び申し上げます。いわゆる公害国会を経て、全国的に下水道事業が展開されることとなっていく中、1972(昭和47)年にJSの前身である下水道事業センターが設立されました。それ以降、これまでの間、我が国の下水道事業を牽引されてこられたことに敬意を表します。
 下水道整備を進めるにあたり、必要欠くべからざる組織として多いに期待され、産声をあげた下水道事業センターは、1975(昭和50)年の日本下水道事業団への改組、1986(昭和61)年の下水汚泥広域処理事業(いわゆるエース事業)の業務追加、2002(平成14)年の地方共同法人への改組等を経て、今日の形となりました。設立当時は17%であった下水道普及率は、令和3年度末現在80.6%にまで達しています。この間JSは、我が国の下水処理場の約7割に相当する約1,500箇所の下水処理場、また約980箇所のポンプ場の新築・再構築に携わるとともに、さまざまな新技術の開発・導入、下水道技術者の研修を担ってこられました。今や下水道は、生活に欠くことのできない社会インフラとなりましたが、これも、社会の期待に応え、我が国の下水道事業を牽引してこられたJSの多大なる貢献の賜物であると考えます。
 近年では、2015(平成27)年の日本下水道事業団法の改正により、建設・維持管理業務の範囲の拡充、災害時の支援業務の位置づけ、権限代行業務の創設がなされ、2018(平成30)年には、いわゆる海外インフラ展開法により、海外技術的援助業務についてもJSの業務に加えられました。今後もますます、新たな役割が期待される組織であると言えるでしょう。
 また、激甚化・頻発化する自然災害からの復旧・復興支援にも大変なご尽力をいただいており、直轄事業のない下水道において、極めて大きな力となっていることは改めてここで明記しておきたいと思います。東日本大震災に関しては、仙台市南蒲生浄化センターなどの迅速な復旧支援、放射能を含む下水汚泥の減容化に係る施設の建設などで、大いにその技術力を発揮いただきました。近年増加している施設浸水被害に関しては、令和元年東日本台風で被災したクリーンピア千曲、令和2年7月豪雨で被災した人吉浄水苑、大牟田市三川ポンプ場などについて、迅速かつ強力にご対応いただきました。
 さらに、下水道事業の課題の多様化を受け、建設工事以外においても、計画策定や経営面での支援へのニーズに応え、持続性の確保に向けたアセットマネジメントに関する取り組みも先導していただいています。技術開発に関しては、栃木県真岡市の技術開発実験センターの整備など、取り組みが強化されてきております。また、下水道に係るBIM/CIMの導入の推進、研修センターの研修環境の改善・向上に向けた新寮室棟の建設など、様々な取り組みを通じて、これまで以上に幅と、深みを持って、活動されてきています。
 先般、発表された令和4年度を初年度とする第6次中期経営計画においては、これまでの取組みをさらに進め、下水道のソリューションパートナーとしての役割に加えて、下水道イノベーターとして下水道事業の変革を積極的に牽引していくこと、下水道プラットフォーマーとして、共通の基盤づくりにより社会全体の発展に貢献されていくとの決意を述べられています。計画の実現に向けて、JSの役職員の皆様が一丸となって取り組まれることを大いに期待するところです。
 人口減少に伴う財政基盤の脆弱化や担い手不足、官民連携による新たな事業枠組みの追及、脱炭素、環境・エネルギー問題への対応、流域治水の取り組み強化、DXの推進、さらには大規模改築をはじめとする下水道施設のフルモデルチェンジなど、現下の下水道事業を取り巻く様々な課題に対応していくためには、引き続き、JSの多大なる支援・貢献が不可欠です。持続可能な下水道事業を目指して、従来の考え方にとらわれない柔軟な発想とチャレンジングな取組によって、下水道界を支えていただきたいと思います。
 大きな期待を背負い創立されて50周年。これまでの半世紀にわたる活動の蓄積を基盤とし、新たな時代においても、各方面からの変わらぬ期待に応えられる組織を目指して、より一層ご活躍いただきたいと思います。次の10年がさらなる飛躍の10年となることを心から祈念し、お祝いの言葉とさせていただきます。