
日本下水道事業団におかれましては、設立50年を迎えられましたことに心よりお慶び申し上げます。
貴事業団の前身である下水道事業センターが設立されたのが1972(昭和47)年11月1日、この年から数えて半世紀が経過したということになります。
当時の下水道普及率は、20%弱。
1970(昭和45)年の公害国会を受け、公共用水域の水質保全が下水道事業の目的として追加され、生活環境の改善や浸水対策はもちろんのこと、経済政策優先で汚染された川や海、湖を元の清澄な水環境へと取り戻すべく、早急な下水道の普及が望まれた時期に当たります。時宜を得て、まさしく下水道整備の推進支援を期待されて設立された組織でした。
設立後の貴事業団の下水道事業への貢献は周知のとおりで、今更私が申し上げることはないと思いますが、新たな技術を開発し、それを実装することで、我が国の下水道整備を驚嘆すべき速さで推進することに多大な役割を果たし、国民の期待に十分応えられてきました。貴事業団の今日までの業績に大いに敬意を表したいと思います。
さて、貴事業団は、今年で50歳を迎えることになったわけです。
50歳といえば、孔子曰く、「十有五(じゅうゆうご)にして学に志し」、そして、「五十にして天命を知る」と論語にあります。
貴事業団は、50周年となった今、下水道事業に対する新たな天命を知る時に来ているのかもしれません。
今日、下水道事業は、2026(令和8)年度までに、その整備の概成を目指しており、その後、本格的な下水道のマネジメント(「改築更新、維持管理、運営・経営を中心に、新設・増設も含む業務を包括的に実施する」こと)の時代を迎えることとなります。
そこで、来るべきマネジメントの時代に、下水道事業をしっかりと支えるのが貴事業団の「天命」であると思います。
今後、貴事業団に期待される具体的な業務としては、広域化・共同化、PPP/PFI、そして、最近の話題となっていますDXやGX、さらには、海外水ビジネス、災害時の支援などがあろうかと思います。
下水道事業の実施主体である地方公共団体は、人員が減少し、財源も厳しい状況にあり、地方公共団体のみでは適切な下水道事業を営むことは難しくなってきます。
その解決方策として、広域化・共同化が注目されています。貴事業団は、下水道の建設時代に、中小の市町村の普及促進のために「船団方式」という手法を提案した時代がありました。同様の発想の応用で、広域化・共同化を強力に支援できるのではないかと思います。
また、民間企業の技術や経験、知恵を大いに活用する官民連携の時代でもあります。PPP/PFIを実施する地方公共団体をサポートすることが求められています。
さらに、DXやGXへの対応があります。新たに注目されている課題への対応の支援も必要です。
そして、海外水ビジネス展開の支援については、中心的な役割を果たして欲しいと思います。
海外水ビジネスは期待していたほど拡大しているとは思えません。世界に誇れる下水道技術を持つ我が国が国際的に展開できないわけがありません。実質的で、現実的な支援が必要です。貴事業団の海外経験者の知恵を活かす時です。
また、大規模地震がいつ発生しても不思議ではない時代であり、雨の降り方も尋常ではない状況にあります。下水道における被災も頻発することが想定されます。不幸にも災害が発生した場合には、迅速な対応を実行できる貴事業団が大いに頼りになります。
そして、各種の支援に当たっては、是非、新たな試みを実行して欲しいと思います。その際、どうしても、新たな仕組み、新たな技術の導入に伴うリスクが心配になると思いますが、リスク回避を第一に考えていては下水道の進歩はありません。貴事業団におかれましては、失敗を恐れず、攻めの姿勢で、リスクに果敢に挑戦して欲しいものです。
このようなリスクを背負って下水道を進化、発展させるのが貴事業団の天命であると思います。
最後になりますが、貴事業団におかれましては、イノベーションを図り、大変身を遂げて、下水道業界に大いに貢献されますことを期待するところです。今後、益々ご発展されますことをお祈り申し上げます。
なお、国交省に移管される上水道事業のことも気になるところです。貴事業団として上水道事業の発展にどのように貢献できるのか真摯に検討して欲しいものです。