地方共同法人 日本下水道事業団

ご寄稿イメージ画像

ご寄稿 Contribution

日本下水道協会理事長岡久宏様
公益財団法人 日本下水道新技術機構 理事長 花木 啓佑 様

1 はじめに
 日本下水道事業団(以下JS)の創立50周年を祝し、心よりお祝い申し上げます。JSの前身である下水道事業センターが設立されたのが1972(昭和47)年になりますが、当時は17%にすぎなかった下水道普及率が、令和3年度末には80.6%まで拡大し、浄化槽等を含む汚水処理普及率では約90%に達するなど、汚水処理普及の概成が近づきつつあります。下水道の普及に伴い、公共用水域の水質改善が進み、下水道インフラの整備効果が実感できるようになってきました。これもひとえに、多くの地方公共団体等を支援してこられたJSの多大なる貢献の賜物と考えています。日本下水道事業団法では、「地方公共団体等の要請に基づき、下水道の根幹的施設の建設及び維持管理を行い、下水道に関する技術的援助を行うとともに、下水道技術者の養成並びに下水道に関する技術の開発及び実用化を図ること等」が定められているなか、これまでの50年間において、この法の趣旨にのっとり、弛まぬ努力のもと、持続可能な下水道事業の実現に向けた道筋を、あらゆる下水道関係者に対し示してくださっているものと強く感じているところです。

2 JSの底力に感謝
 下水道関係者としてJSに感謝していることの一つとして、大規模災害からの復旧・復興の支援が挙げられます。2011(平成23)年3月11日の東日本大震災は、下水道インフラに対しても未曽有の被害をもたらしました。JSは、発災当日には災害対策本部を設置し、翌日には先遣隊を派遣し、その後支援チームを連続的に派遣するなど、迅速な震災対応を実施しています。そして、仙台市に東日本設計センター震災復旧支援室を設置し、長期にわたる災害復旧・復興支援にご尽力くださいました。また、令和元年東日本台風においては、長野県内を流れる千曲川の堤防が決壊し、クリーンピア千曲の場内全体が水没し下水処理が停止しました。こうしたなかでも、全国のJS職員を交代で現地に派遣し、初動対応や復旧に係る支援を実施したほか、新たに長野県復旧支援室を設置するなどの体制構築を図り、令和3年度末には全ての処理機能の復旧が完了したと伺いました。市民生活にとって欠かすことが出来ないライフラインであるとの認識のもと、高い使命感をもち、速やかに復旧を実現したことについて、これに携わったJSに対し、深い感銘を受けたのは記憶に新しいところです。こうした予期せぬ事象が発生した際のJSの「底力」に対して、多くの地方公共団体等が助けられ、感謝しているものと思います。

3 JSのこれからの未来に期待
 地方公共団体の下水道担当部局では、団塊世代のベテラン職員の大量退職により、技術の継承が懸念される状況となっています。処理場建設、改築・更新においては、土木、建築、機械、電気、生物、化学等、広い分野での知見及びそれらの技術開発が重要となりますが、これら専門分野の知識を有する職員が配置されているJSは、地方公共団体等にとって大変心強い存在であると感じます。やはり、JSの強みは、多彩な「人材」に裏付けされた技術力の高さであり、それを分野横断的にマネジメントする「ノウハウ」を蓄積していることです。JSには、地方公共団体の支援・代行機関として、下水道の持続・成長に向けて、これからもその力を存分に発揮していくことが期待されています。

4 さいごに
 2022(令和4)年7月29日、JSと下水道機構は、「下水道管路施設の管理における包括的民間委託の地方公共団体支援に関する相互協力」として、パートナーシップ協定を締結しました。JSと当機構は、持続可能な下水道事業の運営に向けて、様々な課題を抱える地方公共団体を支えるという共通の使命のもと、適切な役割分担のもと相互に協力し、それぞれがもつ強みを最大限に活かすことでシナジー効果を発揮して、地方公共団体のニーズに合わせた円滑な支援を進めてまいりたいと考えています。
 最後になりましたが、今後、我が国を取り巻く状況が益々厳しくなっていくことが見込まれるなか、これら山積する課題に対応していくには、JSの「底力」「人材」「ノウハウ」が益々重要性を増していくものと思われます。これまでJSが培ってきた下水処理場の建設・運営・維持管理等や、社会の要請を踏まえた技術開発、さらには、大規模災害時における対応など、将来世代を見据えた更なる発展と貢献を心より祈念いたしまして、お祝いの言葉といたします。